去年の夏休み、まずは電車でアルプスの麓のガルミッシュ・パルテンキルヘンへ向かった。
そこから観光用の登山列車に乗り換え、山を縫うようにツークシュピッツェへと登っていった。
窓の外はまだ真夏で、草木は青々と茂り、山々は遠くに霞んでいた。
山頂に着いたとき、あたりは雲と霧に包まれ、雪はまだ残っていた。
しばらく辺りを歩き、ロープウェイに乗り換えて展望台へ向かった。
ちょうどその数分の間に、太陽が厚い雲の向こうから顔を出した。
その瞬間、長く埃をかぶっていたレンズを、誰かがそっと拭いてくれたかのようだった。
それまで雲と霧に隠れていた山々、谷、湖が、すべて一斉に姿を現した。
そのとき、澄みきった山々と湖の風景が、そのまま目に流れ込んできた。
青く澄んだ空の下、白い雲がゆったりと流れ、その中を人々が歩いていく。
すぐそばの岩肌を見せた山頂は、流れる雲の間に見えたり隠れたりしていた。
二羽の鳥が谷を横切っていった。
遠くの濃い青色の山脈は、厚い雲に輪郭を押し下げられていた。
麓のアイプ湖は、澄んだ碧色をたたえていた。
谷あいに点在する村々と道は、移ろう陽の光の中に静かに横たわっていた。